小説

蒼空のソマリ/プロローグ

 空だけが、馬鹿みたいに蒼かった。

 辺りは、もはや仲間でも敵でもない者たちが血の海を広げていた。見渡す限りの赤、赤、赤。 

 かつて仲間であった者たち。かつて敵であった者たち。

 「彼」は、そんな中ひとり立ちすくんでいた。

 自らも血にまみれた姿で、その血は自分のものでもあり、浴びた返り血でもあった。

 甘い香りを含んで優しく吹いてくるはずの風は、しかし、いたずらに鉄の臭いを煽るばかりだ。でもそんなこと、「彼」にはもうどうでもいいことのように感じた。血の臭いは、もう自分の身体に染み付いてしまっているのだから。

 「彼」は、つと空を見上げた。

 春の淡い、とろけるような蒼天を。

 「彼」は怒りを感じた。自分に、世界に、馬鹿みたいに晴れ渡る蒼空に。いや、馬鹿なのは自分たちの方で、空はそんな自分たちを嘲っているのだ。

 ----ああ。空が、愚かな世界を嘲笑っている。

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